父の厳しき少年時代

大正八年生まれの父は静岡県の大井川を臨む山間(やまあい)の村で育ちました。

今では、あちこちにダムができたり、河原の多い水の少ない大井川となっていますが、当時は雨が降ると恐ろしいほどの濁流となり、まさに越すに越されぬ大井川に変貌したそうです。

人々は懸命に土手を築き、生きる為の努力を余儀なくされました。その為に“石運び”の仕事を父もしたそうです。

大きさ、重さ、石の数によって賃金も違った事でしょう。

背中にしょって指定された所まで運ぶのですが、効率が良いかは分かりませんが、父は目的地の半分位まで、かつぎ上げると、一旦下ろし、自分の名前を石に書き、又、ふもとまで戻ると新しい次の石をかつぎ、前に置いた石の所で石の交換をし、目的の場所までかつぎ、途中に置いた石の所まで戻ると、その石をかつぎ……。

そうすると手ぶらで歩ける時間ができ、歩きながらでも一呼吸つける訳です。

石に名前を書くのは、せっかく運んだ石を誰かに持ち去られぬ為です。それでも持って行かれた事もあったらしいです。

どれも似たような石ですが、苦労して運んだ本人には分かるのでしょうね。

誰が犯人か? 自分とすれ違った人を思い出し犯人の割り出しをしたのか?

山の中の、ちょっとしたサスペンスです。犯人が分かれば、ケンカになった事でしょう(内(うち)のオヤジがやらない訳がない!)。

賃金は安かったでしょうし、皆さん死活問題ですから必死だったと思います。

私には想像もつかぬ話ですが、そんな話を聞いてから私は石の積み重ねてある所が気になります。

池のまわり、石の階段、城の石垣には工事に当たった藩の印があったり、先人達の努力と技術に敬服します。

 

 

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