あの人の顔が小さな照明の光の中で笑った。白い歯が輝いていた。私はそれを見てキスをしたくなった。その気持ちが伝わったのか、あの人はゆっくり顔を近づけてきた。あの人の柔らかい唇が当たった。私はさらに顔を近づけた。息ができなくなるくらい。

すると唇よりも柔らかくて粘り気のある物が歯に当たり、口を開けると、さらに奥へと入ってきた。驚いたのは一瞬だった。それがあの人の舌だとわかると私は自分の舌でそれを受け止めた。二つの舌は絡みつき、舐め合った。はじめて感じる感触に私の体は熱くなった。そして、舌で舐めれば舐めるほどあの人の唾液が絡みつき、私の一部になった。

ゆうに一分以上はお互いを求め続けた。顔を離すと、あの人の唾液で口の周りが濡れていた。あの人の口の周りも私の唾液で光っていた。

「場所、移動しよっか」

あの人は自分の口の周りを舐めてからそう言った。私は頷き、口の周りについたあの人の唾液を舐めて飲み込んだ。

どこに行くのかは聞かなかった。あの人が連れて行ってくれるところならどこでもよかった。別れが引き延ばされるならどこでも。そしてもっとキスができて、体を密着し合えるところなら。私はあの人にすべてを委ねた。

幾つもの信号を曲がって、車はやっと目的地に着いた。そこは高い塀に囲まれた三階建ての建物だった。すぐ隣は杉林で、他には何もなかった。看板の電飾が今にも消えかかっていた。駐車場の入り口には暖簾のようなものが垂れ下がり、車はその下をくぐって中に入った。

 

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あの人は私を磔にして喜んでいた。私もそれをされて喜んでいた。初めて体を滅茶苦茶にされたときのように、体の奥底がさっきよりも熱くなった。

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