公園はオオムラサキの茂みに囲まれていて、滑り台とブランコだけがあった。来るのは久しぶりだった。

私は昔よく遊んだ滑り台が思った以上に小さいことに驚いた。確か幼稚園生のとき一番上に立ってあまりの高さに足がすくんでしまったことがあった。でも後ろの子に無理やり押されて滑ったのだ。案の定、自分の意思とは関係なく落下する恐怖に耐えきれず、下の砂場に落ちたときは泣いていた。そんな記憶が懐かしいと思えるほどに私は成長していた。

そして今はその公園であの人を待っていた。私は滑り台の上で昔の自分が「頑張って」と手を振ってくれているような気がした。私も心の中で昔の自分に「頑張って」と手を振り返した。「はじめは怖いかもしれないけど、一回滑っちゃえば楽しくなるよ」。そう言うと、昔の自分は笑った。

私は黒い車がオオムラサキの向こうに停まったことに気がつかなかった。クラクションを鳴らされて、はじめて車の中で手を振るあの人に気づいた。

あの人の車は黒のセダンだった。車体はまるで新車のように綺麗に磨かれていた。

「ごめん。待たせちゃった?」

助手席のドアを開けると、あの人がそう言った。私は慌てて首を振って、「全然待ってないです」と言った。

思えば車の助手席に座るのは人生ではじめてだった。父がいた頃は家族旅行でよく車に乗って遠出したが、私の席は決まって後部座席だった。まさかはじめての助手席があの人の車になるとは思ってもいなかった。でもそれは、あの人が教えてくれたはじめての経験の一つにすぎなかった。

密閉された空間に私はあの人と二人っきりだった。心臓が高鳴る音を聞きながら、この先はたして体が持つだろうかと不安になった。今でも十分幸せなのに、それがまだはじまりでしかないなんて。私の見ている現実は夢ではないとわかっていても、夢だと疑いたくなるくらい幸せだった。

気がつくと、車は走り出していた。あの人は片手でハンドルを握っていた。どこかで見たことがあると思ったら、夢の中のあの人とまったく同じだった。あの人は慣れたようにハンドルを片手で動かした。

「一応飲み物いくつか用意したから、好きなの選んで」

ドリンクホルダーにはお茶とリンゴジュースが置かれてあった。私は自分が何も用意してこなかったことを後悔しながらリンゴジュースを選んだ。

 

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あの人は私を磔にして喜んでいた。私もそれをされて喜んでいた。初めて体を滅茶苦茶にされたときのように、体の奥底がさっきよりも熱くなった。

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