第Ⅰ部 医療経営戦略

第2章 医療におけるマーケティング戦略

マーケティング戦略の基本プロセス[※]

それでは次に、マーケティング戦略をどのように立案し、実行に移すかという点について考えます。企業のマーケティングでは、まずマーケティング環境を分析します。その結果から、同じニーズを持つ固まりをセグメントに分解します。市場を構成するさまざまなセグメントの中から、自社が事業を展開するのに最も相応しいセグメントを選び出します。

競合製品と比べて自社製品がどのように差別化できるかを決定し、顧客の頭の中で自社製品を特別の価値のあるものとして位置づけられるようにする活動です(図1)。これらをマーケティングのSTP「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング」と呼びます。

[図1]医療経営のポジショニングマップ

1.どの顧客を対象とするか? ―STPで考える―

以前のマーケティングでは市場全体を顧客とするマスマーケティングが主体でしたが、顧客のニーズが多様化し、特定のセグメントをターゲットとする必要が出てきました。ある市場をいくつかの顧客グループごとに細分化することを市場の細分化(セグメンテーション(S:segmentation))といい、細分化された市場あるいは顧客グループをセグメントといいます。

市場細分化は、統計や市場調査などの客観的な基準を用いて行います。一般的に用いられている市場細分化の基準としては、地理的変数、人口統計学的変数、社会経済的変数、心理的変数、行動変数などがあります。