図式期の段階(5歳頃~9歳頃)
①基底線(base line)
前図式の段階では、平気で人や物を逆さまに描いていました。図式期も逆さまに描くこともありますが、紙のスペースの上下を基本的に理解できるようになります。そのシンボルが、紙の下部に描かれる「基底線(baseline)」(2)(図21)です。
画用紙の下部に、横に線を引き始めると、それが基底線です。これは、単なる線ではなく地面や街路の表現であり、歩行する場所でもあります。紙の上部には、横に線を描き「空」を描いたりします。基底線と空の間に、人や家、ビル、木々や動物、植物等、上部には、太陽や雲等を描きます。子どもが、家の前で遊んでいたとしても、家の前に人を描くような、人と家を重ねることはしません。
また、基底線は、その上に描かれる人やモノと、直角及び平行の関係で描かれます。図22は、斜面に立っている建物と坂道に咲いている花です。いずれも、斜面(基底線)に直角の関係で描かれています。基底線は、図21のような画面下部の基底線だけではなくて、坂道の斜面やテーブルの周囲なども基底線になります。
図22は、真ん中の建物が立っている場所は斜面の頂上で、その上に垂直に立っています。斜面の左右がほぼ同じ傾きで建物の底部が基底線になっているようです。この絵は、とても珍しいと思います。左右の建物は、山の斜面に垂直に立っています。左斜面のアリの穴も斜面に垂直になっています。
ローウェンフェルドの著書には、山の頂上にある建物を描くために、頂上の上に、横に水平な基底線を描き、その上に建物を描いた絵がありました(図23)。家だけではなく木々を描くためにも基底線は必要だったのでしょう。この絵は、とてもユニークだと思いました。
図22の絵を見た時、この絵を思い出しました。この絵には基底線がありますが、図22の絵には建物の下に基底線は見られません。図23は、木を描くために基底線が描かれたのであり、木々がなければ図22と同じ絵を描いたのかもしれません。