ゆっくりと、読み始めた。
日記には、千春の目から見た渉のことが書いてあった。
『渉くんと初めてラーメンを食べた。つけ麺をうまそうに食べていた。あまり食べていないんだろうなと思って、少し胸が痛くなった』
『渉くんが笑った。こういう顔もできるんだと思って、うれしくなった』
『渉くんの過去の話をしてくれた。泣いていた。私は、ただ手を重ねることしかできなかった。それでよかったのか、今でもわからない』
渉は読みながら、何度も手が止まった。
妊娠中のページになると、日記の文章が変わった。
『渉が毎日お腹に手を当ててくれる。その手が温かくて、この人と家族になってよかったと思う』
『渉は不器用だけど、ちゃんと愛情を持って育てられる人だと思う。私はそれが楽しみだ』
『渉は私が重い荷物を持とうとするたびに、さっと取ってくれる。私が病気だからって気を遣わせたくはないけど、本当はすごくうれしい。こういうさりげない優しさが、渉らしくて好き』
渉は手を止めた。
知っていたのか、と思った。気づかれていないと思っていたのに、千春はちゃんと見ていた。
『もうすぐ会える。渉と私の子供に。どんな子だろう。渉に似たら、不器用で口下手な子かもしれない。でもそれでいい。渉みたいに、ちゃんと人を大切にできる子になってほしい。』
そうして、最後のページになった。
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次回更新は10月6日(火)、22時の予定です。
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