次は袰岩進が入室した。彼は薄くなった頭を金髪に染めていた。顔には深い皺が刻まれ、終始目を伏せうつむいていた。
「袰岩進さん、61歳。亡くなった烈斗さんと娘さんの理亜さんが付き合っていたのはご存知ですね」
「はい」
消え入るような小声で彼は返事をした。
「実は先程娘さんから意外な事実を伺いましてね。彼女はあなたの部屋で20年以上前に加藤瑠璃さんがあなたに送ったラブレターを見たと言うのです。あなたは瑠璃さんとお付き合いされていたのですか?」
袰岩はうつむいたまま口を閉ざしていた。
「お答えにならないのですか。理亜さんと烈斗さんが付き合っていると知った時、どう思いましたか?」
「ふたるぐすせんるぶいいとむ……」
「は?」
袰岩がぶつぶつと聞き取りにくい小声で話すので尾崎はイライラした。
「うたすふんむうるくとふすてむせ……」
「ちょっともう少し大きい声で話してください」
「すみません」
尾崎は持っていたペンをテーブルの上に放り出して、思い切り背を仰け反らせた。
「ちょっとこっちももう疲れてるんだからさ、もう少し真面目にやってくださいよ。
いいですか、あなたには殺人の容疑だってかかってるんですよ。もし烈斗さんがあなたの息子ということになれば、烈斗さんと理亜さんは異母兄妹ということになる。2人がこれ以上交際してよもや結婚ということになればまずいことになる。だからと言ってあなたが瑠璃さんと交際していたことを公にすることもできない。
そう思って烈斗さんを亡き者にしたという筋書きだって成り立つんですからね」
「すんくとふあるむすん」
袰岩の声はやはり聞き取れなかった。
「もういい。今日はもうお帰りください。また後日聴取させて頂きます」
尾崎はすっかり呆れ返ってしまった。
「何なんだ、一体この一座は。人間関係がめちゃくちゃじゃないか。頭がこんがらがってきましたよ」
その後全ての俳優及びスタッフの聞き込みを終え、最後に烈斗のマネジャー、林佳奈が部屋に呼ばれた。彼女が部屋に入った瞬間、高井良が
「あっ」
と声を上げた。
「どうしたかね」
天蓋が訊ねた。
「あの人、僕達の隣の席に座ってたんです。あの赤い眼鏡と黒いスーツに見覚えがありますから間違いありません」
「ほんとだ。確かにあの人でした」
コロネも同意した。
次回更新は10月6日(火)、21時の予定です。
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