次に加藤瑠璃が呼ばれた。彼女は細い目をした上品な女性だった。散々泣き腫らして赤くなった目をハンカチで押さえていた。
「息子さんがお亡くなりになったばかりのところを申し訳ありません。加藤瑠璃、本名黒田瑠璃さん、56歳ですね」
尾崎が訊ねた。
「どうして、どうして烈斗が……」
「瑠璃さん、あなたは黒田さんの次に杯を呷りましたね。その時に杯の中に何か入っていませんでしたか?」
「いえ、何も。刑事さん、烈斗に早く会わせてください。どうして息子が死んだというのに私達ここに閉じ込められなければいけないんですか?」
「烈斗さんのご遺体は今司法解剖に回っています。後2週間はお会いになれないと思います」
「そんな……」
「事情聴取が終わりましたら帰って頂いて結構です。ただし、全員DNA検体を採取した後で」
天蓋が言った。
「DNA検査? 何でそんなものが必要なんですか?」
尾崎が不審げに訊ねた。
「もちろん犯人を特定するためだ」
「でも犯人の体液が残されていたわけじゃないでしょう。まさか、さっきの黒田さんのことですか?」
「うちの主人がどうかしたんですか?」
瑠璃が不安そうに訊ねた。
「はあ、実は黒田さんが烈斗さんは彼の実の息子ではないとおっしゃったんですが、それは本当でしょうか?」
瑠璃の顔が一瞬で上気した。
「そんなことありません!」
「えっ、でも黒田さんは……」
「あの人、昔から嫉妬妄想癖があるんです。私が仕事で徹夜になって帰ってくるといつも『誰か男と会ってたんだろう』とか『共演の俳優といちゃついている』とかすぐ疑ってかかるのでいつも迷惑していたんです」
「でも、黒田さんと結婚されたのは烈斗さんが1歳になってからだと」
「それは、昔黒田と付き合い始めた時にすぐに妊娠してしまって、私はすぐ結婚を希望したんですが、黒田は『それは本当に俺の子なのか』とか言って、なかなか承諾してくれなくて、それで私はシングルマザーで烈斗を産むことになったんです。あの子が1歳になって黒田がようやく結婚に承諾したのでそういうことになったんです」
「DNA鑑定をすれば烈斗さんと黒田さんが本当の親子かどうか分かりますがよろしいですか?」
「もちろんです。是非お願いします」
次回更新は10月4日(日)、21時の予定です。
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