再び会議室がざわめいた。今までおとなしく話を聞いていた警察署長が口を開いた。
「何を言っているんだね、君。射殺された山本学の死体が公園で発見されているんだぞ。複数の鑑識官が死亡を確認して司法解剖も済んでいる。それなのに殺人事件じゃないだなんて。自殺したとでも言うのかね」
「いえ、山本は自殺なんかしていません。ところで辻君、さっき証拠、証拠とうるさく言っていたが、実は証拠ならある」
「何だと」
「詩、持ってきてくれたまえ」
後方のドアが開いて詩が大きなスーツケースを重そうに押しながら部屋に入ってきた。
「重たっ。ちょっと天蓋さん、ここまでこれを押してくるの大変だったんですからね。一体何が入ってるんですか?」
天蓋がニヤッと笑ってスーツケースを開けると中から手足を縛られて猿轡を嵌められた男が転がり出てきた。天蓋が猿轡を解くと、男は呻き声を上げた。
「きゃあっ!」
詩が悲鳴を上げた。
「お、お前! フィリピンに逃げたんじゃなかったのか!」
木下が思わず叫んで慌てて口を手で押さえた。辻の顔が蒼褪めた。転がり出てきた男は何と山本学だったのである。
「すみません。女房とどうしても離れ離れになりたくなくて……」
山本は涙を流しながら謝った。
「こ、これは一体どうなっているんですか?」
高井良が目を丸くして天蓋に訊ねた。
「見ての通りだ。山本学は死んでいない。従ってY公園では殺人事件など起きてはいないのさ」
「で、でも、頭部を撃ち抜かれた山本の死体を鑑識が確認して司法解剖までしているんですよ。その写真や報告書や解剖記録も確かに見ました」
次回更新は9月24日(木)、21時の予定です。
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