【前回の記事を読む】「気でも狂ったんですか」頭部を撃ち抜かれ司法解剖までされた死体。それでも係長は「Y公園で殺人事件など起きてはいない」と断言した
ダウト1――銃殺を疑え
「ぼ、僕の推理なんか当てになりませ……」
「いいでしょう」
天蓋が断言した。
「私は彼を信頼している。彼の推理が間違っていたら私は潔く警察官を辞職する」
「係長!」
「さあ、堂々と君の推理を皆さんに説明したまえ」
そう言うと天蓋は空いていた椅子に腰を下ろして悠々と足を組んだ。高井良は一課員やY警察署の署長など錚々(そうそう)たる面々の刺すような視線を一身に浴びて気を失いそうになったが、ええい、ままよと開き直り、震える声で自分の推理を説明し始めた。
「僕がこの事件をおかしいと思ったのは山本学を撃った弾丸がすぐには見つからなかったことです。
事件現場に行ってみると、山本が倒れていたすぐ傍のモミジの幹に弾痕が残されていました。これがその写真です」
高井良は震える足で何とか辻に近づき写真を渡した。辻は怪訝そうな顔で写真を見つめた。
「この穴のサイズから考えてキツツキが開けた穴とは思えません。やはりこれは弾痕だと思います。
また、この穴の高さは山本の身長から考えてちょうど彼の頭部と一致するんです。彼の頭部を貫いた弾丸はその奥にあった木の幹に弾痕を残した。
ところが、この穴の奥に弾丸は無かったんです。一体どこに行ったんでしょうか?」
「弾丸なら昨日の朝、公園の反対側の林から見つかった。それは君の思い過ごしだろう」
「そうでしょうか。弾丸が見つかった場所は山本の死体があった場所から50メートル離れています。確かにトカレフ弾の射程距離はそのくらいだろうと思いますが、人の頭部を貫通した後で50メートルも飛ぶでしょうか。
それにトカレフ弾は自動拳銃で使用される弾丸です。それなら死体の近くに落ちているはずの薬莢はどこに行ったんでしょうか。犯人が薬莢を回収する意味なんて全くない」
「何が言いたいんだ、お前。俺達が証拠を捏造したとでも言いたいのか?」
「山本を撃った弾丸はやはりあの木に刺さっていたんです。
でもそのままにしていたら犯人は捕まる可能性があった。その弾丸が犯人が誰かを指し示していたからです。
弾丸はトカレフ弾ではなく・38スペシャル弾だったから。
薬莢が落ちていなかったのは発砲した拳銃がレボルバーだったからです」
一同が再びざわついた。
「お前、まさか警察官が山本を撃ったっていうつもりか!」
苛立ちを抑えきれなくなった伊藤が吠えた。
「ああ、それも交番の巡査なんかではありません。辻さん、あなたが山本を撃ったんじゃないですか?」
会議室がどよめいた。
「高井良!」
伊藤が立ち上がり、高井良に組み付いた。
「やめろ、伊藤」
辻が一喝した。