第三番金泉寺(こんせんじ)に至り、参拝する。山門から出てきた所で、二人の婦人に声をかけられる。
「どこから来たのですか」
もう一人が、「今日はどこへ泊まりますか」と、尋ねるので、
「東京から来ましたが、泊まる所はまだ決めていません」
「どこまで行くのですか」
「それもまだ決めていません。できるだけ次の大日寺に近い所でと思っているのですが、そろそろ夕方ですし、この辺に泊まる所がありますか」
すると、片方の婦人がもう一人に向かって、
「この裏の方へ行った所に『○○宿』というのがあったよね」
「そう、この裏を登った所ですよ」
「それならさっき極楽寺の山門を出た所の売店にその宿の名前が書かれた栞があり、一枚もらいましたよ。その栞に電話番号も書いてあったと思います」
「それじゃ電話して聞いてみたらどうかしら」
そんな会話があり、近くの公衆電話から電話すると一部屋空室ありますとの答えで、泊まることにした。一日目としては、この辺で疲れを癒しておかないと明日が続かないとの判断は正しかったろう。
宿に入って先払いで料金を済ませ、部屋で荷をとくと、ふっと息が抜ける。
料金を支払ったとき、若い女主人が「明日の朝、大日寺へ送りますか」と訊くので、そうしたサービスを利用するのは一般的なことと即断してお願いする。
「歩き遍路」とは全行程を自分の足で歩くことを意味するので、一人で発心にしたがって気ままに旅することとは違うらしい。