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一緒に暮らし始めて2か月が経った頃、渉は気づいた。
千春が、階段を上った後に息を切らすことがあった。最初は「運動不足かな」と思っていた。でもある夜、千春が「少し、胸がどきどきする」と言いながら、ソファに座り込んだ。顔色が悪かった。
「病院、行ってみようよ」
渉が言うと、千春は少し間を置いてから答えた。
「……実は、持病があって」
「持病?」
「肺高血圧症、って言うんだけど」
渉には聞き覚えのない病名だった。
「肺の血管の圧が高くなる病気で、心臓に負担がかかるの。生まれつきで、ずっと薬を飲んで管理してる。普段はちゃんと日常生活を送れるんだけど、疲れが溜まったり無理をしたりすると、動悸や息切れが出やすくて」
渉はしばらく黙っていた。
「……それって、けっこう大変な病気なんだよね」
「うん。指定難病でもあって。でも、最近は治療薬も進歩してるから大丈夫だよ」
「引いた?」と千春が聞いた。
「引かないよ、そんなこと」
「……よかった」
千春の表情が、少しほぐれた。
渉はその夜から、千春の様子をよく見るようになった。階段では先に立って、千春のペースに合わせた。重い荷物は黙って渉が持つようにした。千春が息を切らしていたら、さりげなく立ち止まった。
千春は最初、「そんなに気を遣わなくていいのに」と言っていた。でも渉は黙って続けた。
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