介護施設に、親を預けるとき、あるいは自分が入るとき。
そこで関わるのはどのような職種の人たちなのか、気になるものです。しかし、はっきり説明できる人は少ないかもしれません。
資格も、役割も、施設にいる時間も、職種によってまったく異なります。
医師は常駐しているのか。看護師は夜もいるのか。ケアマネジャーとは、何をする人なのか。
本記事は、医師であり、介護施設を併設する医療法人の代表も務める氷上龍氏の著書『それでもこの仕事が好き 介護職の魅力が分かる本』(幻冬舎ルネッサンス)から、ある夜勤ヘルパーをめぐるエピソードと、介護施設で働く職種を解説した箇所を併せてご紹介します。
誰にでもできる事ではない
逢坂さんは、現役時代はバリバリの看護師で看護師長まで務めた女性です。
結婚はせず、ひたすら看護師の仕事に身をささげてきました。患者さんや医師から信頼され、若い看護師の教育にも熱心であったようです。
老後は慢性腎不全が徐々に悪化し、利尿剤を服用しないと尿が出ない状態でした。
認知症も発症し、持ち前のきつい性格が表に出始めたため、唯一の家族である妹さんも、姉の介護を自宅でするのは無理と音を上げ、服部の所属する医療法人が経営する有料老人ホームに入所する事になりました。
入所時には全身がむくみ、肺に水がたまって、もうそんなに長くないだろうと医師は判断していました。しかし、本人はまだまだ元気で長生きするつもりです。
施設を病院と勘違いしており、施設の看護師に説教するのが唯一の楽しみです。施設の看護師達も要領を心得ており、逢坂さんの説教をハイハイと聞いていました。
大変なのは夜勤のヘルパーです。
忙しい夜勤の時にもヘルパーに対して上から目線で、いつまでも説教するので、皆気分を害し、なるべく近寄らないようにしていました。
話し相手がいなくなると、夜中でも構わず、大声でヘルパーを呼び困らせます。夜勤のヘルパーは皆疲れ果て、ゆっくり休む時間もないほどです。
しかし尾松という女性のヘルパーが当直する日は、逢坂さんは騒がず機嫌よく寝ているようです。
不思議に思った施設の看護師は、仕事で遅くなった帰りに逢坂さんの部屋に寄ってみました。
するとヘルパーの尾松が逢坂さんのベッドに入り込み、子供をあやすように添い寝をしていました。施設の看護師はその姿に感動を覚えたようです。
このような行為は誰にでもできる事ではなく、介護の基本から外れています。また正しいかどうかわかりません。
しかし人の心はマニュアル通りにはいきません。マニュアル通りにしたからといって、介護されている人が幸せかどうかわかりません。
逢坂さんはその後腎不全が悪化し亡くなられました。きっと添い寝した尾松を母親のように思って、感謝して亡くなられたのではないかと思います。
夜勤のヘルパー、施設の看護師、そして医師。
ひと口に介護施設といっても、そこでは複数の職種の人が、それぞれ異なる役割で働いています。同書の中では、その内訳が以下のように整理されています。
介護施設では、どのような人が働いているか、簡単に説明します。
医師
介護老人保健施設(老健)、介護医療院・介護療養型医療施設以外では、常勤の医師を配置する必要はありません。
介護施設で働く医師は、ほとんど非常勤の配置医師あるいは嘱託医といった契約医師です。一般的に勤務医や開業医と嘱託契約をしており、その医師が月1、2回の診察と薬の処方などを行っています。
看護師(准看護師を含む)
特養、老健、有料老人ホーム等では、看護師の配置が義務づけられています。小規模多機能では看護師は非常勤でもよく、労働時間数の決まりはありません。
看護師の配置基準は少しわかりにくいですが、常勤換算という方法がとられています。一日8時間働けば常勤が一人配置されている、とみなされます。
常勤看護師が一人で8時間働いても、非常勤の看護師が三人合計8時間働いても同じという意味です。
ほとんどの施設で看護師の夜勤はありません。
医師の指示で健康管理、配薬、処置、点滴などを行います。
介護スタッフ(介護福祉士、ヘルパーなど)
介護の仕事をするための資格には、ヘルパー1級・2級、初任者研修修了者、実務者研修修了者、介護福祉士などの種類があります。介護福祉士は国家資格です。ヘルパーの資格は、非常に複雑でわかりにくくなっています。
厚労省は最終的には、介護福祉士の資格がなければ、介護の仕事に従事できないようにしたいと考えています。しかし現在のヘルパー不足の状況では、絵に描いた餅でしかありません。
利用者さんの家事、食事、身体介助など介護施設の中核となって働いています。
ケアマネージャー
主に医療や介護で5年以上働いてきた人に受験資格があります。都道府県の試験に合格した人に資格が与えられます。現在ケアマネージャーとして働いている人の多くは、介護福祉士などの経歴があります。
ケアプランの作成、アセスメント、モニタリング、給付管理などが主な仕事です。難解な言葉が並びますが、要するに介護計画を立て、介護現場にその計画を実行させ、計画通り介護が提供されているか確認する役目です。
利用者自らケアプランを作る事はできますが、現在はほとんどケアマネージャーが作成しています。
施設長(管理者)
施設長はその介護施設の責任者です。施設全体の業務を取り仕切っています。施設長が経営者の時は、人事や経理、収入支出などの管理も行います。
施設長の力量でその施設が発展するか衰退するか決まる、と言っても過言ではありません。
その他の職員
介護や経理の事務、キッチン担当、送迎担当、お掃除担当等の職員がいます。
これらの従業員に介護の資格はいりません。
個人によって必要な施設やサービスは異なります。
ご家族やご自身にあったものを選ぶことで、よりよい福祉に繋がりますので、様々な資料を参考に検討をしてみてください。
※本文中の月額費用は書籍執筆時点の目安です。介護報酬の改定などにより変動しますので、最新の基準は厚生労働省や、お住まいの自治体が公表している資料をご確認ください。
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