親の介護をどうするか。自分自身の老後をどこに託すか。

いざ考え始めると、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅と、選択肢は多々あれど、どれがどうなのか、何がよくて何がダメなのか、違いがなかなか分かりづらいものです。

それぞれの施設の種類によって、入所できる要介護度も、月々かかる費用も、大きく異なります。

本記事は、医師であり、介護施設を併設する医療法人の代表も務める氷上龍氏の著書『それでもこの仕事が好き 介護職の魅力が分かる本』(幻冬舎ルネッサンス)から在宅介護の現場を描いたエピソードと、介護保険施設の種類を解説した箇所を併せてご紹介します。

介護、老後、どうする?(画像はイメージ)

うつ伏せで二日間

送迎担当の中畑から服部に電話が入りました。

「木田さんの家に着きましたが、ドアを開けてくれません。声をかけても小さな声で返事があるだけです」

木田さんは生涯独身で一人暮らしをしている女性です。

服部は木田さんの身に何かあったかもしれないと思い、家の合鍵を姪御さんから貸してもらい、大江と二人で急いで木田さん宅を訪問しました。


木田さんは他人の世話になるのが嫌で近所付き合いもほとんどありません。鍵は木田さんと亡くなった兄夫婦の娘である姪が持っています。


ドアを開けて部屋に入ってみると、木田さんがうつぶせ状態で身動き取れず倒れています。

どうしたの、と尋ねてみると、2階の階段から落ちて二日間このままの状態で倒れていたとの事です。

木田さんはパーキンソン病のため体が硬く手足が動きにくくなっています。
倒れたら誰かに手伝ってもらわないと立ち上がれません。

かたくなな性格のためヘルパーの訪問介護なども強く断っています。何とか週2回のデイサービスと入浴だけは受け入れています。

倒れたすぐそばにペットボトルの空容器が転がっていました。その水で何とか生きていたようです。

自宅で転倒し、2日間も…(画像はイメージ)

――木田さんはその後、施設でのショートステイを経て、自宅での生活に戻りました。

このような高齢者の一人暮らしや在宅介護の限界に直面したとき、選択肢となるのが「介護保険施設」です。
ただし、その種類は多岐にわたります。同書の中では、それぞれの違いが以下のように整理されています。

ひと口に「介護保険施設」といっても、いろいろな種類の施設があります。

よく知られている施設について説明すると、以下のような違いがあります。
まず介護保険三施設(公的施設)について説明します。

1.特別養護老人ホーム(特養)

介護といえば特別養護老人ホームを思い浮かべる人も多いと思います。

それほどよく知られた介護施設です。介護中心で、要介護3以上の人が入所できます。
長期療養可能ですが、末期の看取りをしている施設としていない施設があります。

2.介護老人保健施設(老健)

リハビリ中心で、病院を退院後3〜6か月間入所できます。
要介護1以上の人が入所できます。自宅と病院の中間施設の役割を担っています。

3.介護医療院、介護療養型医療施設

気管切開、胃瘻(いろう)、中心静脈栄養など医療処置が必要な人が入所できます。
かつての慢性期病棟のような施設です。要介護1以上の人が入所できます。
これらの施設はいずれも入所時の費用はいりません。

月額費用は多床室(4人部屋)では5万円から17万円、ユニット型(個室)では18万円から22万円程度です。利用者の収入によって値段は変わります。

以上は公的施設です。

次に介護保険法に規定された民間施設について説明します。
公的施設は医療法人や社会福祉法人でなければ開設する事はできません。
民間施設は法人格を持っていれば民間の事業者でも開設できます。

施設の種類も様々ある(画像はイメージ)

1.グループホーム

医師によって認知症と診断された人のうち、要支援2以上の人が入所できます。
家庭的な雰囲気の中、少人数で共同生活をする事がコンセプトとなっています。
月額費用は10万円から15万円程度。入所時に一時金が必要な施設もあります。1ユニット9名程度の少人数で共同生活を送ります。

2.有料老人ホーム

有料老人ホームには、介護付きと住宅型の2種類があります。
介護付きは施設が介護を提供します。住宅型は入所者が自分で施設外の介護事業所と契約しサービスを受けます。

住宅型でも施設付属のサービス事業所を持っているところもあり、そのような施設では介護付きと、中身はほとんど変わりません。
一時金が発生する施設も多く月額費用も高めです。

3.サービス付き高齢者向き住宅

普通の住宅と全く変わらないような施設から、介護付き有料老人ホームのような施設まで形態は様々です。
利用する人も自立の人から重度の方まで様々です。必要な費用は有料老人ホームより低額になっています。国の政策により施設の数は格段に増えています。

4.デイサービス、デイケア

どちらも通所型サービスです。
デイサービスでは入浴、食事、レクリエーションなどの介護サービスを受けます。デイケアも通所型サービスですが、主にリハビリ中心となります。
入浴や食事の提供をしているところもあります。デイケアは医療機関が運営しています。

5.小規模多機能居宅介護(小規模多機能)

訪問介護、デイサービス、ショートステイ(いわゆる「お泊り」)を1か所の施設で受ける事ができます。
地域密着型サービスで、小回りの利く使い勝手の良いサービスです。
しかし人手がかかり介護報酬も少ないため、半数近くの事業者が赤字です。

食事の提供をしているところもある(画像はイメージ)

個人によって必要な施設やサービスは異なります。
ご家族やご自身にあったものを選ぶことで、よりよい福祉に繋がりますので、様々な資料を参考に検討をしてみてください。

※本文中の月額費用は書籍執筆時点の目安です。介護報酬の改定などにより変動しますので、最新の基準は厚生労働省や、お住まいの自治体が公表している資料をご確認ください。

 

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