【前回記事を読む】「黒毛和牛味を食べたよ!」もう助からないと思っていた猫が、ちゅーるを口にした。私は妻に泣きながら叫んだ…

悲しみの底で見つけたもの~猫さんが生きた八十九日間の記録

四月二十八日(月)

朝、シャンプーの後には必ずしていた嘔吐が無かった。こちらを見つめているが、目に光は無い。水を差し出すと、一口、二口、舐めるだけで、飲まない。ちゅーるも口にしない。もう、この前の様に怒り出す事はないのだろうな、そう確信した。

今なら私と妻で点滴ができるのではないか? 水分さえ体内に入れば、元気になって少しは食べられるかもしれない。今夜、点滴をやろうと妻に提案すると

「夜まで待つのは心配だから、昼間にできない?」

と言ってくれた。この日は、午前と午後に二件の仕事があったものの、幸いにも二件の仕事の間隔がたっぷりとある日だった。助かった。点滴は一人でできなくはないが、一人よりは二人の方が安全だ。では、昼に点滴をしよう。それまで頑張れよ、無理のない程度に。そう声をかけて仕事に出る。

昼、点滴を実行した。暴れる事なく、おとなしく受けてくれた。120ml。その後は活気が戻ったように見え、ほんの少しだけ水を口にする。しかし何も食べない。どのちゅーるでさえも駄目だった。

これまで、イオンやイトーヨーカドーのペットコーナーを梯子して、あらゆる種類のちゅーるを買い溜めておいた。様々な種類を試し、少しでも口にしたものと同じものを毎夜のように買いに出かけていた。とりわけ、猫さんのお気に入りは「真鯛味」「黒毛和牛味」「キングサーモン」「贅沢本マグロ」だった。

だが、この日はどのお気に入りも、試していない新種も口に含もうともしなかった。臭いを嗅ぐだけで、すぐにそっぽを向いた。

風呂に引き籠って伏せている猫さんに話しかけてみる。

「ごめんね。病気を治してあげたかったけど、駄目だった。本当にごめん。点滴で少しでも楽になれるようにするから、少しは食べてね。でも、無理はしないでいいんだよ」

私を見つめ返す目はしんどそうだ。正座をしている私の膝に涙がポタポタと落ちる。

夜、ミルクを飲ませる事にした。その前に、簡単にできそうな点滴を先にする。昼間の点滴の後、水を飲まないからもう一回実行しようと考えたのだ。60ml入れて少し休ませてから猫用ミルクをシリンジで飲ませる事にする。