しかし、シリンジ食でさえ食べられなくなった時用に切り札として買っておいたミルクも、飲もうとはしなかった。口を頑なに閉じて拒否をした。いくらシリンジを押しても口からミルクがこぼれ落ちるばかりだった。

無理に口を開かせほんの少しミルクを飲ませたが、その時舌が真っ白であるのを妻が指摘した。よく見ると、確かに舌からはピンクの血色が失われていた。ああ、貧血がここまで進行していたのか……。二十六日から頑張ってくれたが、ここまでかも。

頑張ってくれた分、余計に猫さんの死が恐ろしい。もう一日だけ、できればもう何日か一緒に居たい。でも、厳しいだろう。何も食べなかったのだから。

この日はほとんど何も食べなかった。排尿は六回で、飲水20mlに点滴180mlで合計200mlの水分を摂った。毎日180mlずつ点滴をするとなると、購入した点滴セットの残量が気になる。計算し直すと五月四日には無くなるだろう。そして、ゴールデンウィークに入っているので、五月一日か二日には処方してもらわないといけないなと考える。だが、次の点滴セットはもう必要ないだろうと首を振る。事態はそこまで切迫していた。

四月二十九日(火)

朝、ケージから出すと、風呂場に行きたがる。そこに歩いて向かうが、後脚がフラフラしている。風呂場から出た時に猫用ミルクをシリンジで与えると、毛玉を吐くと同時に横向きに倒れた。動画でも実物でも猫が横向きに倒れるのを初めて見た。毛玉を吐いた事で食欲が戻ればいいのにと期待する。

午後、点滴を120ml施行する。とてもおとなしくしている。シャンプーの影響でお腹が濡れているので、妻の提案でドライヤーをかける。その後、ミルクを拒否、後に飲むが、またミルクを嘔吐。後脚がプルプルと震えている。自重さえも支えられなくなったのか。ケージ内に入れて休んでもらう事にする。

飲水は僅かで食事を受け付けない。今日は越せないのか?

夕方、ずっと伏せていた。おしっこは、出ない。乏尿、もしくは無尿というやつだ。ここ数日間は高度の脱水だったろうから、体内に水を補充しているからなのか腎臓がもう駄目なのか判断が難しい。

夜、十九時前、ちゅーるを少し食べた。

二十二時頃外出先から帰宅すると、起き上がってレジ袋の臭いを嗅ぎに来た。あんたのベッドを買ってきたんだよ。ちょっと高かったよ。元が取れるまで長生きしてね、と心で呟く。まだ、少しは動ける。水も12mlくらいは飲んでくれた。買ってきたピンクのベッドに寝かせてみる。最期は柔らかいベッドで迎えさせてやりたい、そう思ったのだ。

次回更新は9月27日(日)、11時の予定です。

 

👉『悲しみの底で見つけたもの』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】「昨日、あなたの彼氏さんとホテルにお泊りしました」と言って、服を脱ぎ始めた女…「ほら」と体についた証拠を見せられ…

【注目記事】「今日だけ、お願い」——僕には妻がいたが、彼女のことを無我夢中で抱いた。キスをし、胸を吸い…

 

ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp