【前回の記事を読む】温かい男性の手でオイルマッサージされ、声が漏れた。鎖骨からバスローブの内側へ指が移ってきて…「我慢しなくていいですよ」と…
2.
「……泣いてるんですか」と渉は言った。
幸江は目の端を指でぬぐった。「なんで泣いてるんだろ、私」
「悲しいんですか」
「ちがう。……嬉しいのかな。自分がまだ、こういう気持ちになれるんだって」
渉は答えなかった。幸江の言葉が、空気の中にしばらく漂っていた。
「ずっと、自分のことを女じゃなくて、ただの母親とか、会社員とか、そういうものだと思ってたんです。でも、私の体って、ちゃんとまだこういう反応するんですね」
幸江が小さく笑った。照れているようでもあり、驚いているようでもあった。
帰り際、幸江は着替えながら言った。
「……勇気を出して来てよかったです。ワタルさん、本当にありがとうございました」
「こちらこそ」と渉は言った。
幸江はドアを出る直前に振り返った。「また、来てもいいですか」
「もちろんです」
ドアが閉まった。