現在の解説書に見られる「旧訓等」というのは、この、後世の人の「読み」なのです。必ずしも、原詠手の「読み方」ではないのです。
そんなことを考えながら、読み始めたのですが、万葉集の歌は奥が深く、それなりの歌の素養を持った人たちの「旧訓等」に教えられることも数多くありました。従来解釈の正当性を大いに感じることが出来たのです。
しかし、一方で、従来解釈のおかしな点も多多ありました。
私はこれまで、従来解釈と異なった解釈が出来る、あるいは従来解釈では歌の本質が理解されていない、と思われる歌を「万葉集のつまみ食い」というタイトルでブログに載せてきました。
多くの方々が抱いている万葉集のイメージを変えてみたいという思いもありました。
万葉集全四千五百十六首の内約三分の一弱をブログ用「つまみ食い」として取り上げましたが、その内から二百二十八首を本書に載せております。
尚、本書の第一・第三・第五・第七の各章は原則、万葉集原本の歌番号の順に「つまみ食い」をしています。
今回、世の中の万葉集に興味を持っている方に読んでいただきたいと思い出版をお願いした次第です。
皆様がお持ちの、それぞれの「万葉集現代語訳」と対比してお読み頂きましたら、その違い、私の意図が、更に鮮明に判っていただけると思います。
尚、本書の歌の原文は『白文万葉集(上下巻)』(佐佐木信綱編・岩波文庫、寛永版本の訓を削ったもの、一九七七年第十二刷)です。
辞典類としては、『大漢和辞典』(諸橋轍次著・大修館書店、平成十三年改訂第二版第六刷)、古語辞典は『岩波古語辞典補訂版』(岩波書店、二〇二〇年補訂版第二十五刷)、『新明解古語辞典』(三省堂、二〇〇七年第十七刷)、『旺文社古語辞典』(旺文社、一九八七年重版)、『日本古代人名辞典』(吉川弘文館、平成四年第十三刷)、『日本古代氏族人名辞典普及版』(吉川弘文館、二〇一〇年普及版第一刷)、『増補大日本地名辞書』(吉田東伍著・冨山房、昭和四七年再版)、等です。
また従来解釈本としては、『新訂新訓万葉集(上下巻)』(佐佐木信綱編・岩波文庫、二〇〇三年第九十刷)、『万葉集全訳注原文付』(中西進、講談社文庫、二〇一三年第三十二刷)、『新版万葉集現代語訳付き』(伊藤博訳注、角川ソフィア文庫、令和五年二十一版)を参照いたしました。
参考文献としては『日本書紀』(坂本太郎ほか校注・岩波文庫、二〇〇三年第十刷)の巻末の原文から訓点を外して私訳したもの)、『古事記』(倉野憲司校注、岩波文庫、二〇〇三年第六十九刷)の同様の私訳です。