第1章 福祉

ああ94才

玄関脇の草の葉が落ちて風に舞っています。“ああ冬だな”と思っていました。でもよく見ると裏庭に通じる通路の草も全て葉が取れ平らになっています。“もしや?”と思い裏庭に出て見ると庭の草が全て刈リ取られていました。“またTさん”

秋から冬は草花の生育もなく、あえて刈ることもありません。ですから草刈りをすることもなく、Tさんが入り込むこともないと思っていました。でもTさんがやって来て草刈りをして行ったようです。官舎の裏庭は住宅2棟分程の広さがあります。春から夏にかけては草花が生い茂り刈っても刈っても、すぐに生えて来ます。草刈り機を使って草刈りをすることは結構重労働です。

Tさんとの出会いは化石医師が坂下に赴任した時からです。その頃、Tさんの奥さんが脳梗塞のため寝たきりで入院されていました。Tさんは奥さんに付き添われ世話をされていました。その後奥さんは旅立たれましたが、Tさんは糖尿病のため化石医師の外来に通院されています。官舎関係の管理は病院の総務に委ねられています。

ある日、帰宅した化石医師は異常に気付きました。塀に巻きついた蔦がきれいに刈り取られていたのです“もっと生い茂って塀全体を覆って欲しい”と勤務の行き帰りに蔦が広がり易いように、所々手直ししていた化石医師にはショックでした。「頼みもしないのに誰がこんな余分なことしてくれたのだ」怒る化石医師に対して総務の担当者は終始無言でした。

実は総務の担当者がまったく知らない事だったのです。蔦を全て除去してしまった犯人はTさんでした。

 

👉『続・新健康夜咄』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】2人も産んだ女の体。本当は見せたくないのに…仰向けになったところで、脇を舐められ、「いや?」と聞かれ…

【注目記事】彼氏以外の男性に唇を奪われても私は抵抗しなかった。それは彼氏への不信感が強まっていたからかもしれない

 

ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp