九 年月

法要の間沙代里姫の墓前に供えられていた宗佐の指は、その後なぜか見えなくなり、どれほど探しても見つけ出すことができませんでした。

風に吹きさらわれたか、雨に押し流されたかと、寺の者が総出で隈なく探し回ったのですが、どうしても見つからなかったのです。

これは必ずや、姫が成仏する際、宗佐の指を形見として天に持ち去ったに違いないと人々が語り合ったのは、むしろ自然なことでした。

沙代里姫と宗佐の間に生じた奇譚は瞬く間に巷に広まり、様々な人々によって様々に語られました。

気の毒がる者もいれば、気味悪がる者もいれば、好奇の目を向ける者もいました。

「盲者につけ入るとは、怨霊も考えたものよのう」などといった、心ない嘲りを言って笑い合う者たちもいました。

この奇譚にもののあわれを見たのは、風流を解するごく一部の粋人ぐらいのものでした。

彼の異名もいつしか「笛吹き宗佐」から、「指切り宗佐」に変わっていました。指を失ったことと、亡霊と心を契り交わしたことの、二つの意味がこの異名に込められていたことは、言うまでもありません。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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