第3章 認知症
サ高住への選択
介護施設の候補は既にいくつかあった。妻の父から探すよう頼まれていたからだ。
私たちはそんなに急ぐ必要があるのかと思っていたが、長年母に連れ添ってきた父だけが、母の生活力の低下とその速さを見抜き、将来を案じていたのかもしれない。
自分の死後間もなく娘夫婦に迷惑をかけることになるだろう、と。
高齢者向けの住居、つまりホームと称されるものは大きく二種類ある。
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)と介護老人ホーム(以下、介護ホーム)だ。
サ高住は、簡単に言うと学生寮または社会人寮の高齢者版みたいなものだ。各部屋は個々人で契約し、部屋にはキッチンや洗面台、浴室とトイレが一般的に備わっている。
広々とした食堂があり、事前に申し込んでおくと食堂で朝昼晩のごはんが提供される。もし自分でごはんを作りたい場合は、自室のキッチンを利用すれば良い。
そしてその食堂スペースを利用して毎日何かしらのアクティビティが行われ、興味が湧いたりスタッフの勧めで参加する。そこで入居者同士が仲良くなったりする。
サ高住の正面玄関は施錠はされておらず、入居者は自由に外に出ていける。居酒屋に行ったり、何泊もする旅行も可能だ。