長年の構想が実施の段階に移せたのはよかったが、困ったのはV氏がそのまま上にいることであった。

全社的なテーマになった仕事の中枢を派遣の私が務めるわけにはいかず、会議の場ではV氏がチームの中心であり続けたために、本来の意図が十分に理解されないまま余分な要素が付け加えられ、仕事が無駄に重くなる一方で目的は矮小化される結果になった。

最終的な目標にたどり着かないまま結局プロジェクトは打ち切りとなり、私は他の組織にテーマを引き継いでもらう決意をした。

そのプロジェクトが進行している頃も、G氏はV氏に従うのみであった。提案者である私と仕事の話をしようとせずに以前と同じ働き方を続けている彼を眺めていると、この人は何を考えて生きているのだろうと疑問を覚えざるを得なかった。

G氏は上に信用できる人がいる前提で何かをするという習慣から抜け出せない人であった。その前提はX社が始まったときから崩れたままだったが、彼はそれに気づかないのか、心理的な事情から気づきたくないのか、私にはそれが謎であった。

与えられた上司に従うのが正しいと信じているらしいG氏には、仕事に関する理解力だけでなく、倫理観や社会観、さらに身近な現象に対する観察力や関心といったものもどうやら乏しかった。

国費も含めて投じられてきた研究開発費の額を思えば自己中心的な上司のメンツを仕事上の必要よりも優先するなど私には考えられないことだが、何を優先するかについての判断の基準も実際に何が起きているかを把握する感覚も満足に備えていないらしいG氏は、自分と同じ服従心を私にまで期待していた。

G氏の存在は、私にとって一つの発見であった。

物語や正義の主人公として振る舞うP氏やQ氏も、伝統的な組織で中間管理職を演じるV氏も、知性や主体性の乏しいその他大勢の存在を前提にして何かを主張する傾向があり、彼らに考え方を改めてもらうには、何も考えていない従順なその他大勢など現実には滅多に存在しないと認めさせる必要があったが、G氏はその役を見事に務めてしまう人であった。

X社の主人公だったP氏は、「ボクには他の人の目には見えないものが見える」などと言いながら自身の才能と理想主義の価値を信じる人であった。そして彼が外されてチームを引き継いだV氏は、ボクの機嫌次第で解雇されるのがキミたちの現実なのだと部下を脅迫する態度を露骨に示していた。

理想を指さして妄動を繰り返すP氏も、非正規に現実を見なさいと要求して保身を図るV氏も、仕事で求められるリアリズムのレベルには到底達していなかったが、上に従うのが習慣になっているG氏にチームの厳しい実状を認識している気配はほとんどなかった。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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