【前回記事を読む】妻が子供と寝落ちしたから、本来は2人でやるべき愛猫への点滴を一人ですることに…世界中が愛猫を見捨てても、自分だけはお世話をするのだ。

悲しみの底で見つけたもの~猫さんが生きた八十九日間の記録

四月二十六日(土)

深夜、点滴後にシリンジでウェット食を食べさせた。

すると、いきなり怒り出した。原因は分からない。

初めは食べたくなかったのかもと考えたが、とにかく信じられない程怒っていた。これまでになかったレベルで過敏で攻撃的となり、牙を剥き出して唸った。

その声は、大げさではなく近所中に聞こえる程だった。瞳孔は開きっぱなし。尿毒症の神経症状だろうか?

きっと最期の時がやって来たのだ。この日まで頑張ってくれたんだ。

私が未練を残さない様、突き放してくれているのかもしれない。

彼女はスピリチュアルな猫という言葉を思い出す。

きっと苦しいだろう。

彼女はダイニングテーブルの下で吠え、喚き、飛び掛かろうとした。ケージに入れて休ませてやりたいが、そもそも恐ろしい程の迫力で近づけない。

ちょっと足音を立てただけでも、自分を見失った奇声をあげて襲いかかろうとする。うっかりすると大怪我をしそうな雰囲気があった。

息子は怯えて泣き出した。私は妻と息子を自分の部屋に避難させた。

とても触れる状態でない以上、夜間解放軍のリーダーになってもらうしかなかった。

何度か捕まえようと考えたが、一歩近づくだけで襲われそうなのだ。

初めて猫を怖いと思った。これまで、怒る猫さんを何度も見たが、これまでのはほんの遊戯というか「怒っているふり」だった。

叩かれても引っ掻かれても、痛いとは思うが怖くはなかった。だが、それは猫さんの優しさだったのだ。これまでは気に入らない事があって攻撃しても、手加減してくれていたのだ。