俳句・短歌 歴史・地理 歌集 日本列島 2020.10.16 歌集「秋津島逍遥」より三首 歌集 秋津島逍遥 【第33回】 松下 正樹 “忘れえぬ旅をまたひとつ三十一文字に封印す” ――日本の面白さに旅装を解く暇もない 最果ての無人駅から、南の島の潮の香りまで、まだ見ぬ土地に想いは募る。 尽きせぬ思いが豊かな旅情を誘う、味わい深き歌の数々を連載にてお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 雪の夜に藁蓑よそふ赤鬼の 人なつかしく山を降り来る 赤鬼の雄叫びあげて村ぢゅうの 家を訪ひゆく男鹿のなまはげ 戸を叩き座敷にあがり来るなまはげを 招く慣ひに酒肴ととのふ *酒肴 お酒とお膳料理(はたはたの干物など)。
小説 『再愛なる聖槍[ミステリーの日ピックアップ]』 【新連載】 由野 寿和 クリスマスイヴ、5年前に別れた妻子と遊園地。娘にプレゼントを用意したが、冷め切った元妻から業務連絡のような電話が来て… かつてイエス・キリストは反逆者とされ、ゴルゴダの丘で磔はりつけにされた。その話には続きがある。公開処刑の直後、一人の処刑人が十字架にかけられた男が死んだか確かめるため、自らの持っていた槍で罪人の脇腹を刺した。その際イエス・キリストの血液が目に入り、処刑人の視力は回復したのだという。その槍は『聖(せい)槍(そう)』と呼ばれ、神の血に触れた聖(せい)遺物(いぶつ)として大きく讃えられた。奇跡の逸話(…
小説 『高校生SM 』 【第4回】 大西 猛 教壇の机の上、忘れられた筆箱を、あの人の体に触れるかのようにそっと優しく触った。そこからあの人の手の熱まで感じ取れそうだった。 私は授業中、いつもあの人の書いたものを一字一句残らずノートに写し、あの人が言ったことも聞き漏らさないように耳を澄まし、メモした。ノートは一回の授業で二ページ、三ページ埋まることは当たり前だった。それでも私は新しい知識が増える喜びを覚えた。あの人が紹介した小説や映画もなるべく観るようにした。映画は「ベン・ハー」や「スパルタカス」「ローマ帝国の滅亡」などを観た。小説はアリストパネスやソフォクレスの戯…