外からやってくる先生が教える簿記の授業は生徒数が十人もいなかった。どんな先生が来てくれるのか、ちょっと楽しみに待っていると、教室に入って来た先生を見てたまげたのなんの。先生はどう見ても母さんと駆け落ちした、あの「和田」にそっくりだった。おまけに声までそっくりだ。本人じゃないかってほどだった。いや、そんなことはどっちでもいい。

ただ、私は「和田」に対して、とてつもない嫌悪を抱いていたらしい。忘れていたあの日の修羅場が鮮明によみがえり、思わず吐き気がして教室を飛び出してしまった。

和田とそっくりな先生の顔を見ながら、まともに授業を聞いていられるとは思えない。

〈神様、トミサト様。絶対にあともう一単位、余分に取らなきゃ卒業させてもらえませんか?〉

私はもう二度と和田そっくりの先生を見る気にはなれなくて、簿記会計はあっさりとあきらめることにした。他の単位を落とさなければ何とかなるだろう、なんて甘い考えで。

卒業への最低出席日数を死守して生活費を稼ぐ毎日はひたすら眠くてヘトヘトに疲れた。学校へ行っても始業のチャイムとともに机へ突っ伏して眠り、終業のチャイムで目覚めているのだから、これって行く意味あるのかな。もはや通学の目的は「高校卒業」のタイトルだけで「将来のための勉学」では完全になくなってしまっていた。

私の寝坊を防止するために、アキちゃんが私のアパートに泊まり込んでは、翌朝起こして学校へ引きずって行ってくれた。持ち上がりで三年A組はまたもやトミサトが担任で、彼は遅刻にとてもシビアだったから。A組のクラスメイト、メイちゃん、トモ、ミルキイも、お母さんに頼んでお弁当を作ってもらい、食料持参で順番に訪ねて来てくれた。

次回更新は8月20日(木)、21時の予定です。

 

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