片倉はペンを置き、姿勢をこちらに向けた。そして俺は神木に続きを促した。

「あの日、一度目のライブの後で控室にいる時に病院から電話がありました。すぐに病院に来てほしいと。僕はマネージャーの久保さんに『妹に会いに行きたい』と言いました。しかし、久保さんは

『この後もライブをしなくちゃならないのよ! いい、何度でもいうけどあなたはスターにならないとだめなの! 妹さんは助からない。どうせ死ぬ人間に会いに行ってどうするの! うちの事務所のためにも、そんな無駄なことでライブを中断できない!』

そう言いました。僕の中で、何かがプツンと切れました。そして化粧台を向いた久保さんの頭をめがけて、テーブルに置いてあった灰皿を振り下ろしました……」

神木は久保京子殺害時の様子を語った。俺は神木の目をずっと見ていた。俺の頭の中に黒崎さんの言葉が蘇る。

『小林……神木奏馬を……救ってやれ』

俺は片倉に話しかけた。

「いいか? 片倉……今から俺の言う通りに聴取記録を書いてくれ……」

『僕、神木奏馬は事件当時控室にて、死の迫った妹に会いに行きたいとマネージャーの久保京子さんに懇願しましたが、久保京子さんは承諾せず口論となりました。

最愛の妹の最期に立ち会えない怒りを抑えることができず、テーブルに置いてあった灰皿を手に取り、床に叩きつけようとして振り下ろした時、手に衝撃が走りました。偶然にも化粧台の方を向いていた久保京子さんの頭を直撃しておりました』

「片倉……聴取担当刑事所見欄にこう書いてほしい……」

俺は片倉がペンを走らせているのを確認した。そして……

『神木奏馬に久保京子に対する殺意は認められなかった』

片倉は驚き、手を止め、俺を見た。片倉は

「小林さん! いいんですか?」

そう確認を求めてきた。俺は片倉に言った。