【前回の記事を読む】新聞を見て「自分と同じことが起きていた」ことが発覚。「なぜか良いリンゴが取れなくなった」という農家の記事に心配が加速し…

第一章「柿」栽培への新たな挑戦

3 リン酸の働き

リン酸とデンプンの関係

このように、デンプンの分解や合成に使われるリン酸だが、その量によって、分解や合成の進み具合が変わることを見逃してはならない。リン酸が多い場合は、デンプンの分解がより進み、少ない場合は、デンプンの合成がより進むということを。過剰のリン酸は、デンプンの合成を妨げるのである。

過剰のリン酸が、その貯蔵性を悪くする例は、柿の他でもよくあり、一般論のようだ。特に、家庭菜園で作るタマネギやジャガイモのような貯蔵性の作物は、過剰のリン酸を吸収しないように気をつける必要がある。

子供の頃、私の住む地域はタマネギの産地であった。今、家庭菜園で作るタマネギの三倍くらい大きかったのを覚えている。冬の間、我家の軒の下にぶら下がっているタマネギを見ると、複雑な思いがする。

ヤワ果の大量発生

令和三年度は、かつて経験したことのない程の大量のヤワ果が発生してしまった。原因は、盆過ぎの後期肥大時の長雨によるものと推察している。

そもそも、リン酸は、付近の環境が嫌気状態になると水中に溶出してくる性質があるとされている。この時、長雨により土壌中の酸素が極端に少なくなり、嫌気性となったため、多量のリン酸が溶け出したものと思われる。しかも、土壌中のPHが中性付近であるため多量のリン酸が過剰に吸収されたことになる。この結果、デンプンの分解が進んでしまい、ヤワ果の大量発生になったものと考えられる。

ただし、我家でも最初のうちは、多くのヤワ果があったが、すぐに平常にもどった。これは、無肥料栽培により、土壌中のリン酸濃度がある程度減少したことによるものと考えられる。ただ、最初のうち多くのヤワ果が発生したことから察すると、まだまだ多量のリン酸が土壌中に眠っているものと推察できる。