とうとう株主の委任状争奪戦にまで追い込まれた。事前に金融機関をはじめとする安定株主工作に抜かりがなかったこともあって、経営側が八〇%の票を集めて、コンドルなどの提案は葬り去った。しかし、二割近い賛成票は大きな禍根を残す。
「いったい何をやっていたんだ、君たちは。プロキシーファイトはないってレポートを出していただろう。誰の責任だ!」。総会後の役員会では、本来、経営責任を負うはずの首脳陣が、一斉に責任逃れや犯人捜しに血道を上げる。
そもそもアクティビストやらプロキシーファイトやら、なじみの薄い難解な用語はどこの星の話だと、他人(ひと)ごとのように無関心な輩(やから)が多い。有象無象(うぞうむぞう)の役員会は、経営企画室長と「チームC」を戦犯に祭り上げることだけは全会一致で同意した。上席の担当役員すら手のひらを返すように裏切る。
敗戦処理を担うチームCは、コンドルと資本関係にある台湾の投資ファンドが一心同体で動いていたウラを後に知る。
上場企業の発行済み株式数の五%超を保有する株主は、原則として五日以内に「大量保有報告書」の提出を義務付ける決まりがある。これが「五%ルール」だ。ところがコンドルも台湾のファンドも、五%を超えて買い増したのは総会の直前だったため、事前に「五」という数字は露見しなかった。
総会の翌週、新橋の雑居ビル地下でチームCの解団式が開かれた。
「まさか、コンドルとその仲間が合わせて一五%近くも保有するとはな」
「五%ルール逃れの駆け込み買収って、なんだか闇討ちっぽいよ」
「これからますます要求はエスカレートするに違いないな」
懣憤やるかたない各部のエースたちは釈然としていない。トカゲのしっぽ切りのように責任を一身に受け、子会社への転出が決まった経営企画室長の送別会も兼ねた解団式だった。
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