「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声」
「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声」
「諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きあり」
「諸行無常(しょぎょうむじょう)の響きあり」
「沙羅双樹(しゃらそうじゅ)の花の色」
「沙羅双樹(しゃらそうじゅ)の花の色」
「盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)を表(あらわ)す」
「盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)を表(あらわ)す」
口移しで歌を教えられるのは、楽人(がくにん)の修行始めのやり方で、生仏には身に染みついていた。
「驕(おご)れる人も久しからず」
「驕(おご)れる人も久しからず」
「ただ春の夜の夢のごとし」
「ただ春の夜の夢のごとし」
「たけき者もつひには滅びぬ」
「たけき者もつひには滅びぬ」
「ひとへに風の前の塵(ちり)に同じ」
「ひとへに風の前の塵(ちり)に同じ」
「それでは、ここまで、琵琶を奏して語ってくれないか、生仏」
「琵琶、ですか? 私が?」
「そうじゃ」
慈円の言葉に、しばらくためらっていた若者は、息を整え、糸の調子を調整してから、真っ直ぐに慈円の方を向いた。
琵琶を手にした途端、生仏の背筋は伸び、足の構(かま)えが違った。
初めて生仏は撥(ばち)を琵琶に置き、掻(か)き鳴らした。
慈円は、驚いた。深く、力の籠(こも)った音色。それは宮廷雅楽の優雅な楽琵琶(がくびわ)の音色(ねいろ) とも、寺の単調な声明(しょうみょう)とも違う。
生仏は琵琶を弾きながら、朗々と歌い上げた。