三
「捨て子だって」
お富さんが水アメの瓶を片手に飛び込んできた。お富さんは二人の幼子をはやり病で亡くし、さらに立て続けに船乗りだった亭主も海にさらわれたのだった。
薹(とう)が立っているわけでもないが身持ちは固く、ちょっとした雑貨物を商って生計を立てていた。江戸っ子だけあって情に厚く面倒見の良い人だから、近所でも人望が厚かった。
「まあ、なんてえことだろうねえ」
赤ん坊を見るやいなや、着物の袖を目に当てた。
「お上人、どちらか小僧さんを一人貸しとくれよ。町内を回って一枚ずつでも良いからおむつをもらってきてほしいんだよ。恐らくおむつはびっしょりだよ。後は私が浴衣で縫うからさ」
さすがお富さん、一筋頬を濡らすが速いか、テキパキと行動に移した。
「三吉、行ってこい。捨て子にお恵みをってわしが頼んでいると言ってな」
三吉が再び飛びだした。その間、お富さんは産湯を使わせ、水アメを溶いてらくのみに入れ、それを赤ん坊の口に含ませた。赤ん坊は無心に吸った。
「よっぽどひもじかったんだねえ」
やがて数枚のおむつを手に、三吉が帰ってきた。
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