【前回の記事を読む】大浜海岸ではかつて、述べ100回以上もウミガメの上陸が確認されていたが、1990年代から激減し、2020年には…

第1章 発心の道場――徳島県[阿波の国]

9日目 ただひたすら歩く(3月21日)

札所と札所の間が歩きお遍路の醍醐味と言われる典型的区間に入ります。23番札所薬王寺から24番札所最御崎寺までの約80キロを二泊三日かけて歩く初日です。巡拝霊場はありません。

早朝6時前に宿を出ました。「室戸81キロ」の道路標識が、まだ薄暗い中に見えます。

よここ峠を経て寒葉坂(131m)を越えるまでは山手を歩き、それ以降は山道に入っては浜に下るを繰り返す、「八坂八浜」と呼ばれている遍路道です。途中に別格4番札所鯖大師(さばだいし)本坊(ほんぼう)があります。阿波(徳島県)で鯖とは、土佐(高知県)のカツオに対抗したのでしょうか。

鯖大師の縁記(『四国別格二十霊場会公式サイト 第四番 鯖大師本坊』参照)によれば、「弘法大師から積み荷の塩鯖乞われたが、口汚くののしり渡さなかった。そうしたら馬が急に苦しみだした。そこで弘法大師がお加持水を与えると馬はたちまち元気になった」と。

ここでまた、お大師様「イイノスカヤ」が出ます。口汚くののしられて塩鯖をもらえなかったので、その本人ではなく大切な馬に法力をかけて苦しめたとは、何とも大人げない。いったいこの縁記は何を伝えたいのか理解できず、〇〇大師と出会うたびに、懐疑的になってしまう罰当たりな私です。

朝まだ暗い中の楡木塔

今日は、急勾配の山岳霊場とは異なり、膝と足の裏への負担がキツい舗装道を、雨降りの中、スマホからお経を聴きながらひたすら歩く一日。車なら2時間弱で着く距離が、歩きでは3日がかりです。

このような時間感覚は、「歩く」という行為だけではなく、これまでの生活で持っていた様々な感覚を変えさせます。ひたすら歩くという時間は、これまで意識してこなかったことを、何か大発見でもしたかのように気付かせてくれます。菅笠に当たる雨音と朗々と響くお経という歩き行そのものでした。