【前回の記事を読む】18歳の青年が突如として姿を消した。村中の人で探し回ったが…実は、登山家に憧れた彼は1人で塩見岳へ。吹雪く山で彼は…
ナンシン共和国の章
お父さんと僕の冒険篇
おじさんに聞く「ストレスフリー」って、なあに
山に取りつかれてしまったのかと思って、あるとき聞いてみた。
山は楽しいか?
……「“ひなびた不思議な旋律”が、何かわからないからそれを聞きたい」。
「雪山でしか聞けない」……と春樹がいった。
おじさんにもわからないが、村の伝説の登山家がいったことを、どこかで見聞きしていたんだろう……。
好きなことには、勉強熱心だったから、よく図書室から本を借りて調べていたようだった。
そのとき、思った。
春樹は春樹なりに、自然と向き合って、“自分の旋律”を見つけたかったのではないかと。
おじさんは、リズム感はないけれど、春樹が山にいるときの歩き方には、リズム感があるんだな。
岳斗 そういえば、父さん、絶対転ばないもんなあ。「あ、転びそう!」と叫んだとき、クルンと回り、反対の足で地面をつかみ直し、その勢いを借りて滑るように、山を下りていく姿をよく見た。
重い荷物を担いでいても転ばない。足と地面が一つになっているのでは?と思う歩き方だった。
普段、歩いている姿とは別人だあ……と思った。お父さんの歩く姿を見て、わかったんだ。失敗しそうなことを、前もって、先に、先に感じて、歩いているように思った。
僕も自分らしい歩きかたをしたいなあ……。“歩く”ことは、すごく楽しいことなんだ……と思った。何かを創る楽しみ……というか。
山にいるときの父さんは、失敗しても「やっちゃった」と、くよくよしない。「リズムをつかむのは、失敗の積み重ねだよ。挑戦しないと失敗しない」ともいっていたけど……。
?? ふーん と思った。わかったというか、お父さんと僕との違いがあることを感じた。
僕は「やっちゃった」ことをくよくよしないけれど、“失敗した”と思ったことがない。だから、お父さんのいっていることが、半分くらいしかわからない……。