この場にいる二人が、この不可思議な異常事態に声を上げない。否定しない。
「あの、遥香は……」
「遥香はね、亡くなったのよ」
泣きじゃくる由紀子さんに代わって、遥香の祖母がこちらを見て言った。
「そんな……」
身体が急激に、尋常じゃないくらいに冷たくなる。なぜ、そんなことに。
「そんな、僕、なにも……」
「ごめんね。それが遥香の願いだったから」
「本当に亡くなったんですか?」
理解できない僕は、会話の脈絡すら厭わずに、遥香の祖母に問う。
「本当よ」
「そんな! なんで!」
思わず声を張り上げてしまう。そんな僕に、遥香の祖母はさらに衝撃的な言葉を口にした。
「子供を生んで、引き換えに亡くなったの」
「……はい?」
「あなたとの間にできた子供を生んで、亡くなったのよ」
「え……、そんな……」
言葉を失うとは、まさにこのこと。
「だって、遥香は……、子供は……おろすって……」
「あの子、頑固だったのよ。絶対に生むんだって」
由紀子さんが泣きじゃくりながら答える。