「この髪留めに見覚えはありますか?」
俺の問いかけに、清水智哉は
「ああ、マネージャーの久保さんがいつもつけてますよ。実はその髪留めは私が久保さんに贈った物なんです。非売品でしてね、メーカーがキャンペーン用に限定生産した物で、業界の関係者から貰いました。それを久保さんが欲しがったものですから、桜手芸能事務所とこれからも懇意にしたくて……」
俺は清水智哉に説明してやることにした。
「この髪留めは死体騒ぎがあった当日、控室で片倉が発見したものです。おかしいですよね? 久保さんがいつも身に着けているなら控室にあるわけがない」
清水智哉の全身から汗が噴き出す。目は泳ぎ、焦点が定まらない。俺はこれまでの経験上そうなる参考人や犯罪者を嫌というほど見てきた。そして、そうなった人間が言い訳を始めるのもいつもの事だ。
「い、いくら限定品でも他にもあるでしょう? そ、その髪留めは久保さんが身に着けている物とは別のものでしょ? 私を逮捕するためにあなた方が用意した別の髪留めでは?」
俺は哀れなこの男に、警察にしか分からない事実を突きつける。
「この髪留めはうちの鑑識課に見てもらいました。数本の毛髪が発見され、間もなくDNA鑑定も終わります。鑑定結果を照合すれば久保さんの物かどうかもすぐ分かります」
清水智哉はなおも抵抗しようとしたので、俺は卑怯な手を使うことにした。
「毛髪の他に被害者の物と思われる〈血液〉も検出されました。どういうことか分かりますね?」
隣りの片倉があきれたような顔で俺を見る。俺も片倉の顔を見ると心の中で呟く。
『片倉……俺がこういう刑事(おとこ)だと知っているだろう?』
俺は改めて清水智哉を見た。そして清水智哉はあきらめたように話し出した。
次回更新は7月20日(月)、16時30分の予定です。
【イチオシ記事】妻の姉をソファーに連れて行き、そこにそっと横たえた。彼女は泣き続けながらも、それに抵抗することはなかった
【注目記事】アプリで出会った女性と初めて大人の関係に。最初のデートの時とは打って変わって、彼女のノリは悪く…
ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp