ただ沢村祐太朗という若者には伝わっていたようだ。彼は翌年違う事務所に拾われ、数年後には彼が同期のスターだと語った杉村繭子と肩を並べるまでになっている。
この業界は一つの評価が全てではない。基準の曖昧な世界、方程式の無い世界だからこそ、信じる自分の感性が大切となる。若者にそれを教える先生の責任は大きい。
その表現は芸の道、彼が誰の教えを信じてプロになったか、それは重要なことだ。その師弟関係は事務所の垣根を越えて一生続く。逆に、師匠選びを間違えると、その才能が埋もれてしまうこともある。教える大人は、その責任の重さを常に感じなければいけない。
実力のある声優になりたい、その想いは素晴らしいことだ。あらためて言うが、そこにマニュアルは無い。声優とは職人ではないからだ。査定などがある場合、わかりやすい一定の基準がないと評価ができないではないかといわれるかもしれないが、声優業は技術の採点競技では決してない。
その実力とは、人の心に届く表現、そのベクトルの強さを持っている人のその力のことを言っている。作品を観て幸せな気持ちになってくれる、その演技に心を打たれたと言ってもらえる声優を目指さないといけない。
人を幸せにできる、そんな表現を出せる人がたくさん出てきてくれること、それは神野マネージャーにとってだけでなく、全ての人にとっての願いでもあるはずなのだ。
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