「それと『毛髪』が数本」
俺が聞き返す。
「毛髪?」
松下鑑識課長は頷き、見解を話し始める。
「髪留めに毛髪がついていても不思議ではないが、状態が気になった。毛髪の断面が全てちぎれた感じだ。何か衝撃を受けて髪留めと共に引きちぎれたのかも知れない」
俺の頭の中で、聞き取りした3人の女の子の話で符号する点があった。
『そういえば女の子の話で『ガラス製の灰皿が死体の側に落ちていた』というのがあったな?』
俺の様子を見ていた松下鑑識課長が
「何か思い当たるようだな?」
そう言った。俺が立ち上がると、片倉も慌てて立ち上がった。そして鑑識室を出ていこうとしてあることに気がつき、振り返り松下鑑識課長に尋ねた。
「松下鑑識課長! 毛髪からDNAを採取してほしいのですが?」
松下鑑識課長は少しムッとしながら
「あんた。あたしを誰だと思ってる! 抜かりは無い! 少し時間はもらうがな。さ、聞き取りに行って来い」
俺は安堵して鑑識室を出ていった。俺達は刑事課に戻ると、刑事課長に髪留めの鑑識結果を報告した。そして俺が自席に戻ると、片倉が電話をしていた。電話口で
「……では清水智哉社長は今日は一日ご在社ということですね? はい、時間は取らせませんので……そうです! 清水社長や皆様の疑いを取り除くお役に立てれば……では後ほど小林と私、片倉の2名でお伺いします。……では失礼いたします」
片倉が電話を置くと、その様子を見ていた俺は片倉に
「お前……時々気が利くよな?」
と言った。これでも褒めたつもりだ。片倉は得意満面で
「時々ではないです! 『いつも』ですよ」
俺は腕時計を見て
『朝一では向こうもバタバタしてるだろうから……10時位に行ってみるか……』
片倉に10時位にライブハウスに行こうと打ち合わせをして、他の仕事に取り掛かった。