【前回の記事を読む】婚約していた彼女から突然、別れを切り出された。彼女のまさかの“言い分”は、とても納得できるものではなく…
第二章 台風七号の被害の為、東京へ
初めての恋
川崎重機では様々な建設機械の整備を経験したが、特に印象深かったのがメンクと呼ばれていた建機だ。
ある日出張から帰ると、これまで見たことがない大きな建機が届いていた。建機というより、まるで戦車だ。ドイツのメンク社と日本車両が技術提携して開発した一号機だった。
初めての建機だから、誰も動かし方がわからない。操作マニュアルのようなものもない。トレーラーに積んだまま置いてあって、みんなただながめているだけだ。
鈴木君なら動かせるんじゃないかと工場長から指示された。運転しておろすように私は言われた。
色々なブルドーザーやクレーンなどを動かし、整備してきた。しかし全く初めての建機だ。外観もごつくて、何とも言えない威圧感がある。私は緊張感半分、これを動かしてみたいという好奇心半分でチャレンジしてみることにした。
上司からキーを渡され運転席に座って、全てのレバーがニュートラルであることを確認しキーを挿入し回すと、エンジンがかかった。ここまでは普通の重機と同じだ。
次に運転席の周りをゆっくり観察してみた。様々なレバーがあったので、こっちのレバーを押すとこっちの方向に動くんだなと一つずつ確認して、メンクの動きを理解した。次はバゲット本体を上に上げ少しずつ前進させてみよう。徐々に少しずつ進めよう。
なんとか無事にメンクをトレーラーから下ろし終わった。全員が拍手喝采で讃えてくれたのは気恥ずかしかったが、日本にはまだ数台しかなかったメンクを動かすという東京で初めての経験ができて忘れられない一日となった。