警察幹部は、雲をつかむような案件を嫌うことが多い。しかし、今回のような場合、既にマスコミにも取り上げられていて関係者の間では不安が広がっていたので、警察が捜査しないとなると大きく信頼を損なうことになりかねなかった。
浜道は、清一に事件内容を伝えただけで満足したのか、食い下がることもなく引き揚げて行った。一人残された清一は肩透かしを食らった感じだったが、青森へ異動することが決まった時、事件に積極的に参加できるかどうか疑問だったので、自重することを心に決めていた。そこで、首を突っ込むような発言は控えた。
青森は閉鎖的な土地柄だと聞かされていたが、果たして現地に赴いてみると、そのことがひしと肌で感じられた。
客観的にみて清一の刑事の実績は充分だったが、異動先でそれなりの仕事が与えられることは少なかった。今回の異動にしても、青森中央警察署の刑事課勤務ではなかった。本来の捜査からはかけ離れた仕事だった。元警視庁の敏腕刑事ということで、刑事課での拒否反応が殊更強かったのかもしれなかった。
二か月後、浜道は合浦警察署を訪れたが、清一が話に乗ってこないと判断すると、ため息を残して帰って行った。
「大利家戸さん、浜道の力になってください。彼は、大の大利家戸ファンですよ」大利家戸ファンを自他ともに認める玉田が言った。
玉田は十和田西警察署の刑事で、清一が十和田西警察署に左遷されて以来の良き相棒だ。特命捜査があるときにはいつも清一のそばにいて、真相解明のために命懸けの行動をとった。
その玉田に後輩刑事の浜道から電話があり、清一を動かして欲しいと懇願されたのだった。
「玉田、相談に乗ってやりたいが今は拙(まず)い。僕は、十和田西警察署に左遷されてから五つの警察署を渡り歩いたが、地元で起こった事件では警視庁の刑事なんかには負けられないという地元刑事に悩まされ続けてきた。捜査に参加できない、捜査情報が得られないことが多くあった。いまは、僕と接触しただけで浜道の立場が悪くなる」
「多分、そんなことではないかと思いました。浜道には慎重に行動するように話しておきます。それで、事件の感触は」
と、後輩思いの玉田が粘り腰をみせた。
「事件性が多分にある。タイムカプセルを埋めた前後に何か起きていたかもしれない。その頃、実業高校ではリンチ事件が起きていて、地元新聞では大々的に取り上げていた。前後に何かあったはずなんだ」
清一が、推理の一端を話した。
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