大人にはすでに寒い季節なのに、彼は先日と同じ格好だ。薄汚れた半袖に半ズボン、頭にはジャイアンツのキャップ。不自然さなどどこにも感じないけれど、わたしは、言葉や映像では表しきれないささくれのような感覚を覚えて、彼の服装に見入った。

確かに、冬でも薄着でいる子供は珍しくない。

だけど、この子は寒くなくてこの格好をしているのだろうか。プロ野球チームのキャップも、好きでかぶっているのだろうか。そういう目で見てみると、殊に、妹の服装に違和感を覚えた。戦隊ヒーローもののワッペンがついた半袖シャツに膝が抜けそうな長ズボン。明らかに男物のお下がりだ。それに、ツインテールのバランスもおかしい。

「よかった、おねえさんが来てくれて」

こっちの台詞だと思った。この二人が現れなかったら、このまま帰ってしまうつもりだった。たった今浮かんだ疑問は封印して、当たり障りのない質問をしてみる。

「今日は野球してないの? 他のお友達は?」

「友達なんかじゃないよ。あいつら由香をいじめたから、もう遊んでやらないんだ」

子供の世界にも色々あるらしい。詳しく尋ねるのもなんだから、「そうなの」とだけ答えておいた。

「行こうか、あのおじいさん忘れてなきゃいいけど」

「うん。望遠鏡、楽しみだな」

邪気のない感情を表す兄の裾をつまんで、妹がうしろに続いた。

間もなく夜になる。本当にこの子らの親は許しているのだろうか。仮に親には内緒で来たとしても、こちらに責任はないから、気にする必要はないのだけれど。

「あまり長居はしないようにね。わたしもちょっとだけ見たら帰るから」

「うん。また来ればいいもんね」

ぞっとするようなことを言う。同じ市内とはいえ、こんな辺地までそう何度も来られるものか。

外野フェンスならぬ、板塀まで来た。不用心にも木戸は開いていた。

「ごめんください」

遠慮がちに訪(おとな)いを告げると、「遠慮せんで入ってくれ、こっちだ」と声が返ってきた。

「失礼します」

腰をかがめて木戸をくぐる傍を、子供らが元気よく駆けていった。

「今晩は。来たよ、おじさん」

「おお、よう来た。そんな格好で寒くはないか? ほれそこの魔法瓶に、熱々のココアが入っとるぞ。好きに飲みなさい。あんたもよう来なさった」

「どうも」

次回更新は7月17日(金)、11時の予定です。

 

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