【前回記事を読む】98歳の父が夏になると「黄色い水!」と叫んでくる。コップに入れてあげると、幼子顔負けの父の姿を見せられ…
5 貞さん、幼子に帰る
2021年 世紀の決戦
2021年夏の東京オリンピック、日本対アメリカの野球決勝戦でのこと。
場所は横浜の某スタジアム。その日午前中所用で、その近辺を歩いていた私は、周辺の警察官の多さ、神奈川県警察だけではない、他県からの応援の警察官の姿も見えて、否が応でも午後7時からの熱戦に緊張やら期待が膨らむ。
夕食などあのエツコズ・スペシャルで適当に済ませ、早くからテレビの前に陣取り観戦態勢を整える。貞さんにもこの世紀の決戦のすごさを分からせたく色々説明するが、なにせ耳が遠く果たしてどこまで理解できているか分からない。時刻は刻刻と迫り、そんなことにいつまでも関わり合っていられない。ホワイトボードに大事なことだけ書いて見せた。
「オリンピック、 野球、 決勝戦、 日本対アメリカ、 勝ったら金メダル! 応援よろしく!!」
「分かった?」と聞くと「うんうん」と頷いていたが、ベッドに横になっていた貞さんは、試合が始まって程なく寝入ってしまった。3時間13分後、日本金メダルに狂喜乱舞する騒ぎで目を覚ました貞さんに「日本、勝ったよ! 金メダルだよ!」と告げると、貞さんの返答が洒落ている。
「そうか、勝った?」
「良かったなぁ」
「おまえが応援したからだな」
「じゃあなんかご褒美もらえるかもしれないな」
高ぶった気持ちがほっこりする瞬間。
日本がまたやった!
2023年3月、WBC優勝! ご褒美、ダブルでもらえるかな。
98歳のお誕生日。9と8のキャンドルを持って