「平くん、これからみんなでボウリングとカラオケ行くんだけど一緒に行かない?」
振り返ると、同期の彼女が屈託のない笑みを浮かべて立っていた。その背後には、同じようにこちらを伺う仲間たちの姿がある。
彼女の言葉に、一瞬で自分の顔に影が宿るのを感じた。それは、彼女たちの眩しさとは決して交わることのない、僕の現実が作り出す影だ。
彼女たちは純粋な善意で、僕をこちらの世界へ引き入れようとしてくれている。けれど、僕にはその手を取るための数千円がどこを探しても見当たらない。
「ごめん……これからアルバイトがあるから、行けないんだ。いつも誘ってもらって、本当にごめん」
絞り出した言葉に、彼女の顔がふっと曇った。拒絶された悲しみではなく、僕の『事情』に触れてしまったことへの戸惑いが見え、胸の奥がチリりと焼ける。
「そっか……。御幸、あんまり働きすぎて体壊すなよ! 遊べる時は、絶対一緒に遊ぼうな!」
遠ざかる仲間たちの背中から、温かい声が投げかけられる。
ありがとう、と小さく手を振り返して僕は一人、逆方向へと歩き出す。周りには恵まれている。
心からそう思う。だからこそ、その優しさが痛い。
次回更新は7月7日(火)、20時の予定です。
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