敗けた! ただ単に優勝できなかっただけでなく、大学入試への一助にならなかっただけでなく、もっと大切なものを得る機会を逃してしまったような、寂寥とした想いを抱きながら、恭平は応援団の前まで重い足を運んだ。

応援団は、戦いに敗れた時の応援歌『磐梯山』を歌い始めた。

(彼らはサッカーを応援する風を装いながら、実は、彼らのヒロイズムと、センチメンタリズムを満足させ、彼ら自身を鼓舞していただけなのだ!)

そして恭平は、そんな彼らに見てもらおうと、滑稽な道化役を演じていたのだ。

スタンドを見上げると、最前列の佳緒里も起立して歌っていた。

いや、佳緒里は歌ってはいなかった。佳緒里は泣いていた。恭平を睨み付けるようにして泣いていた。あの涙は、恭平への涙だ。

(そうだ! 俺は、道化師なんかじゃない! 今、泣くべきは俺なんだ!)

そう気づいた途端、両の目から涙が溢れ、嗚咽が始まり、悔しさが込み上げてきた。

胸が、ズキンズキンと痛み始めてきた。目の前が真っ暗になり、応援団が声を張り上げて歌う「磐梯山」も聞こえなくなった。恭平は、立ったままで気を失っていた。

「本川さん、本川さん……」

名前を呼ばれ、肩を揺すられて恭平は正気に戻った。二年生の三浦と長谷川に両腕を抱きかかえられ、二人に支えられて恭平は辛うじて歩くことができた。

「本川さん、来年こそ僕らが仇を取って、全国大会に行きますから、もう泣くのは止めてください」

(そうか、こいつらには来年があるのか。でも、こいつらの来年が、俺にとっての何だと言うんだ。俺には、もう来年はない)

胸が、痛い。頭の芯までキリキリと痛んできて、身体中がカッカと燃えるように熱い。恭平は両膝に手をつき、前屈みの姿勢でゼーゼーと苦しい呼吸を続けていた。試合には敗けてしまって、恭平の得たものは「準優勝」と言う、敗者のレッテルだけだ。

結局のところ恭平は、タオルも巻けず……救急車にも乗れず……勝利にも見放され……伝説はおろか……悲劇のヒーローにもなれなかった。

 

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