感謝・再スタート・自分の城

約1、2年ほどは汚くて雑用のような仕事ばかりしていた。勝也は若い頃にもっともっと大変な仕事をしていたので、汚くても重労働でも頑張れた。

弓子のお店のお客さんから月に1、2件ほどの小工事の仕事を貰っていたのだが、その社長さんが心配して、新しく客先を紹介してくれた。勝也はそれを無駄にしないよう、完璧な仕事を目指し、頑張っていた。

すると、その社長さんは勝也の評判を聞き、次から次へと客先を紹介してくれるようになり、少しずつ仕事が増えていった。こうして仕事ができるのも、恩師の息子が会社を辞める時に仕入先や取引先に連絡を入れ、勝也の取次の話をしてくれていたからだ。

ある日、知らない人から勝也に電話が入る。「○○さんの紹介で電話させて頂いた」と、恩師の息子の紹介だった。辞める時に勝也の電話番号を伝えて、後の仕事は勝也へと勧めてくれていたのだ。この知らない人は大きな会社の営業マンで、どんどん仕事を持ってきてくれるようになった。

次第に仲良くなり、居酒屋で一緒にお酒を飲んだり、スナックに行くようになると、この会社の仕事のほとんどを勝也に持ってきてくれるようになった。この頃から材料持ちの請負仕事が少しずつ増えていった。

勝也の仕事は特殊な職種で職人や業者も少なく、噂を聞いた会社から次々と仕事を貰うようになっていった。勝也は本当に周りの人に恵まれていると感謝していた。

工場を借りていた会社が倒産し、一時は加工場も資材置き場もなくなっていたが、この頃にはシャッター付きの車庫を3台分借りていても、それでも間に合わないくらい忙しくなっていた。この頃には勝也の子供も小学校中学年、家を建てるつもりだった矢先での不渡りに元請会社の倒産。勝也は新築の家は諦め、中古の一軒家を購入する事になった。

紗香が広告やチラシなどで探した家で、内覧に行くと築3年近く経っていたにも関わらず、新築のように綺麗な家だったので即決で購入した。中古物件になってしまい、紗香には申し訳ない気持ちがあったが、紗香は凄く喜んでくれていた。勝也も自分の城、やっと自分の居場所ができると思い、凄く嬉しかった。

しかし、現実は変わらなかった。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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