第2章 骨折 早期退院目指して

転倒から始まる長い入院

その二年後。九十二歳の時、リビングで走って滑り大腿部頸部外側骨折。救急車で京橋駅近くの救急病院に搬送され、入院した。寒くて足が冷えると、手編みの毛糸の靴下を履いていた。それが滑る原因だった。

円錐形の金属の棒を大腿骨に埋め込む手術を実施。三ヶ月入院と告げられた。

当然、全身麻酔をする。麻酔の副作用も気になる。この手術の後、身内でも何人もの高齢者が数年後には命をなくしている。手術は成功しても、である。不安感がこみ上げてくる。そして医師から三ヶ月の入院を告げられた。リハビリを含む入院期間だと理解した。

手術の翌日、病院に行くと母は私にベッドの柵をはずせと頼む。何度も、何度も。トイレに行きたい、と。

「手術したあとだからオムツでしないとあかん」

「そんなことでけへん」

「がまんして、ね」

「なんでそんな意地悪するの」

「手術した後だから無理なの」

「うん」

オムツで大便するということは明治生まれの母にはとうていできないことなのだ。ほぼ十分おきに、何時間も、母が目を覚ましている間、このやりとりが延々と続いた。私の心は大きく揺れ動いた。

次回更新は7月15日(水)、20時の予定です。

 

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