【前回の記事を読む】四つん這いでうずくまる90歳直前の母に嫌な予感……翌朝、字を書かせてみると――

第1章 脳梗塞 突然の発症と在宅介護の始まり

私を捨てないで!

病院では各階に浴室があり、シャワーの他浴槽も設置されている。しかし、病院側が提供するのは週二回のシャワーのみ。しかし、家族がすれば毎日でも浴槽にも浸かれることもわかった。ストレス解消に入浴がいいのは体験的に知っている。

次は頭を活性化させることが脳梗塞のリハビリに効果があるのではと考え、親戚や友人に毎日のように電話をかけてもらった。相手が変われば話す内容も変わる。母の頭はフル回転しているはず。発声にも脳梗塞の影響が見られ、電話の相手は最初はいつもの母の声と違うので戸惑っているようだった。

電話を受けた相手の中には「見舞いに来い」と催促されているように感じられた方もおられるのでは、と思ったが。迷惑な話だがこちらは母の頭のリハビリに役立つならとの思いで、迷惑をかえりみずに実行した。

さらに母の思いは退院後にも及ぶ。誰が自分を世話してくれるのか?

「あんたは私の世話をしてくれるの?」

この不安感を取り除くことが毎日の母との会話のテーマにすらなっていた。

私は二十歳頃に家を飛び出し両親とは疎遠な関係が長期間続いた。その息子が今は同居しているとはいえ、自分の介護をしてくれるとは夢にも思わなかったのだろう。