脳梗塞の予兆を見逃していた
予兆はあったのだ。
「信号で立っていたら、急に右足に力が入らなくなって転んだの」
「地下鉄の階段を上っていたら頭がフラフラするので、下りてくる人に『今、地震がありましたか』と聞いたら『地震はありません』と言われた」
母は、自分の身に起きた変化に不安を抱いていた。にもかかわらず私は、それを「歳のせい」と片づけ、向き合おうとしなかった。脳梗塞について何の知識もなかった。その時点で診察を受けていたら防げた病気だった。私の無知が母の病気を発症させたのだと思う。
リハビリにかける希望と現実
脳梗塞の場合は緊急処置として血管を広げ、血栓を溶かす点滴を行う。一〜二週間後の症状の安定を確認してリハビリを実施する。
問題はリハビリ開始の時期の遅さ(入院一週間後)に加え、リハビリが病棟で実施されず、リハビリ室での一時間のみだったこと。後は病棟で自分で頑張りなさい、というシステム。これでは九十歳近い高齢者には精神的ダメージが大きく、生きる意欲も失われる。
結果としてベッドでの臥床時間が増え、リハビリの一時間以外は足を使うこともなくなる。食事、トイレは車椅子での移動だ。何をするにも移動は車椅子という親切なサービスだ。移動以外はベッドの中で横になったまま。
これでは廃用症候群が発生し、健常側の筋肉さえ衰え、退院時には車椅子でお帰りとなる。こうした病院の実態は素人でもおかしいと気づく。現実に危機感を持った家族は素人判断で病棟での年老いた親のリハビリを勝手にせざるを得ないわけだ。