その潜水もまた美しかった。浅瀬の流れるプールから始まって、歩行専用のウォーキングコースも潜水して泳いでいく。そしてメインプールではフィンをつけていないにもかかわらず、お尻を水面に突き上げて勢いよく潜った後に、二十五メートルのプールの半分以上を脚と腕一かきで泳いだ。

一かきの後に両腕を下ろして脇腹の左右に揃えたまま、青い水中の底を進んでいくしなやかな身体は水と一体となっていた。途中、プールロープのチェックがあるので、一旦頭を出して立ち上がるのだが、それがなければ一気に二十五メートルを潜水のまま泳いでしまいそうな無駄な動きのない美しさだった。

潜水は体幹が強くないとうまく泳げない。水泳体形とは思えない細身の彼のどこにその力があるのかと、不思議なほどにスムーズな動きだった。そしてすべてのチェックを終えて、プールサイドで正面から両腕の支えだけで一気に両脚ジャンプでプールを上がる姿がまた、やんちゃで可愛かった。

水底チェックタイムが終わり、遊泳者が次々とプールに戻っていく。誰もいなくなったジャグジーに移動した私は、その近くにあるスタッフルームに一番近いシャワーで、美しい潜水を見せた彼が水着を着たまま身体全身を洗い流すのを見ていた。無造作に黒髪に両手を入れて洗う彼の髪や全身から、水しぶきがほとばしっていた。

肉体が水に濡れたり、しぶきを飛ばしたりすることが、エロティシズムを沸き立たせることを私は初めて知った。彼は匂い立つようにセクシーだった。

その後、プールで彼がいると必ず笑顔で挨拶をするように意識した。彼も私を認識し、いつも笑顔で返してくれた。プールで彼を見つけ、その立ち姿や潜水を見るのは楽しかった。

しかし港ヘルスクラブのプールは一部改修工事が予定されていて、十一月は休館となることが決まっていた。体形維持に運動をするためだけに通っていた無感情のプールで、せっかく小さな楽しみを見つけたのに、一か月も彼の姿を見られないのはつまらなく思えた。

 

👉『スイミングプール』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】月に3回、同僚とホテルへ行く習慣ができた。職場の飲み会の帰りにそういう流れになって、恋人はいたけど止められなかった。

【注目記事】その夜、彼女の中に入ったあとに僕は名前を呼んだ。小さな声で「嬉しい」と少し涙ぐんでいるようにも見えた...

 

ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp