# 10 #
城東警察署に戻って来た時は日が沈みかけていた。刑事課では片倉がノートパソコンの前で固まっていた。ブツブツと何か言っているが想像はつく。俺は自席に座ると片倉に話しかける。
「報告書、進んでないんだろう?」
俺の問いかけに対して片倉は
「やはり分かりますか? 書くことがほとんどなくて……。ところで小林さんの方はどうでした?」
俺は片倉に3人の女性に聞き取りした内容を伝えた。片倉はすぐに反応を示し
「小林さん。お手柄ですよ! 狂言なんかじゃ無かったんですね」
片倉の言葉に俺は言葉を返した。
「お手柄というほどじゃない。それに肝心の死体が無い。聞き取りを裏付ける手がかりも無い。無い無い尽くしでどうやって前に進めばいいのか? ……こんなのは初めてだよ」
片倉は考え込んでいたが、突然、声をあげた。
「そうだ! 小林さん。あの髪留め! あれを鑑識に見てもらえば!」
片倉は鬼の首を取ったように言い放つ。俺は苦笑しつつ
「聞き取りに行く前に松下課長に預けてある。早ければ明日、明後日くらいには何か分かるんじゃないか?」
片倉は会心の考えが、既に実行されていたと知り、ほんの少し気落ちしたようだ。そこで俺は報告書の作成が進んでいない片倉の気分転換を兼ねて、お使いを頼むことにした。
「片倉。鑑識課に行って『髪留め』の鑑定がいつ終わるか聞いてきてくれ。いいか? これは重要な仕事だ」
片倉は
「分かりました。鑑識課に行って確認してきます」
そう言うなり刑事課を出ていった。片倉と入れ違いで刑事課長が入って来た。俺はこれまでの経緯と聞き取りの内容を報告すべく、席に着いた課長の前に行く。
「どうだった?」
先に口を開いたのは課長だった。俺はこれまでの経緯を話し始めた。課長は時折頷きながら聞いていた。そして聞き終わると
「女の子達の話は信用してよさそうだ。だとすると……問題は『消えた死体』か……」
課長は天井を見上げた。俺は一つの提案をした。