【前回記事を読む】女子学生の自宅に聞き込みに行くと「袖のボタン取れてますよ…つけてあげましょうか」と、上着を脱がされた。「いい人」と言われた。

# 9 #

「今回の事で憂鬱になったり、眠れなくなったらここに連絡してほしい。きっと君の力になってくれる」

そう言って《地域課》の直通電話番号を書いたメモを渡した。俺は部屋を退出しようとしたが振り返り

「コーヒー有難う、うまかったよ」

と礼を言った。山口知佳は

「インスタントですよ。お礼なんていらないのに……」

と少し申し訳なさそうに言った。俺はその言葉に

「こう見えて俺は〔インスタントコーヒー〕にはうるさくてね。その俺が美味いと思ったんだから美味いコーヒーだよ」

山口知佳は

「刑事さんて、あなたみたいな人ばかりなんですか?」

と聞いてきた。俺は

「城東警察署の連中は変わり者が多いのは確かだ。俺もその一人さ! じゃ、帰るよ」

俺は山口知佳の部屋を出てコインパーキングに向かう。腕時計を見て

「今日、出来る事はこんなところか? ……さて署に戻るか……」

俺は一人つぶやき、今回の一件を考えながら歩いた。

『死体無き殺人事件。その死体は短時間で消えてしまった。事件ではないから動いてくれる人員には期待できない』

俺は頭を掻いた。そして周りに聞こえるような声でつい独り言を言ってしまった。

「なんで俺にばかり厄介なことを押し付けるんだ! うちの署は!」

俺はコインパーキングに停めた愛車に乗り込むと、やや乱暴にドアを閉めた。