転の章 元は一(ひと)つ(虚空界)
旅(たび)終(おわ)る(地上界)

元は一つ

二十三、

恐懼感激して、ひれ伏していた素の神に、

閃光(せんこう)(きらめく光)が走り、

ピリピリと、痛みをあたえて、去った。

虚空からの閃光のように思われたが、

素の神には、その真意はつかめない。

痛みを感じるのは、なにかの警告であろうと、

素の神は受けとめた。

そこで、いろいろと、思いをつのらせてみた。

……天地になれる神はあっても、虚空になれる神は、

古事記の上では、聞いたことがない。

それゆえ、神の霊力では、虚空に向かうことはできないものと、

諦(あきら)めていた。

天地創成の巡拝で、恐懼感激して、

虚空への巡拝などとは、思いもよらなかったのである。

しかし、よくよく、考えてみると、

それでは、天地創成前の、虚空の世界、

真(まこと) の真実の世界、

すべての根源の世界(二つとしてない、元は一つ)を、

見過ごすことにならないか、という疑念は残ることになる。

そうこう、しているうちに、素の神は、虚空にいたるためには、

古事記(天地創成)を越えなくてはならない。

古事記の神々(別格の天つ神)を越えなくてはならないと、

気づいたのであった。

二十四、

また、閃光が走った。

今度は、痛みはない。

不思議にも、素の神は、閃光の言葉(意味)が理解できた。

「古事記の、天地に身を隠された神々、

すなわち、天地は、虚空の実相なり。

そなたを、破格(はかく)(ありえない扱い)にも、

これより、自然の子とす」

ここで、素の神は、神の衣(神の真実)をぬぎ、

天衣無縫(てんいむほう)(自然で完美であるさま)の、

自然(虚空の真実)の子に生まれ変わることになった。

しかし、「虚空の実相」の意味は、わからなかった。

またまた、閃光が走った。

自然の子になったせいか、閃光の意味がよくわかる。

「古事記が述べる『身を隠された天地』は、

あるがままの、虚空の姿

すなわち、虚空の実相なり。

智慧の櫂(かい)(船を進める道具)と、

天地の御船(みふね)を与えるゆえ、

虚空界へまいれ」

とのご託宣であった。

荒唐無稽(こうとうむけい)(根拠のない、でたらめ)のようなご託宣である!

虚空界など、果たしてあるのだろうか!?

半信半疑(はんしんはんぎ)(なかば信じ、なかば疑うこと)のまま、

自然の子は天上界から、

虚空界へ向かって、

案内役をかねた智慧の櫂で、

天地の御船を漕ぎだしたのである。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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